Vol.43 No.1 No.165「歴史がわかる地図 歴史を楽しむ地図」
〔表紙解説〕
ウルバーノ・モンテの世界地図
ウルバーノ・モンテの世界地図
表紙はイタリア・ミラノ出身の地理学者“ウルバーノ・モンテ(Urbano Monte、1544〜1613)”が作成した60枚からなる世界地図(1587年作)を合成したもの(後述)。北極を中心とした方位図法であるが、正距ではない。裏表紙(下)の地図は合成した地図をもとに正射投影法で編集部で作成したものだが、日本の位置(北緯30°東経135°、図の中心)はゴビ砂漠のあたり、北東の巨大な島が日本となる。このように世界地図としてはやや不完全だが、ヨーロッパが東アジアに目を向ける時期と重なる。
モンテは1585年7月に日本からヨーロッパへの初の公式使節団である「天正遣欧使節」とミラノで面会(ウルバーノ・モンテ年代記)している。そのため、1570年に発刊された“オルテリウス”の「世界の舞台」に比べ、日本の地名が詳しい。年代記には使節から伝えられた当時の日本の様子が記されており、「日本はイタリアの3倍もある大きな国(64葉裏、実際は1.25倍)」で、緯度は「ほぼ35°であり、気候はジブラルタル海峡や、サルディーニャ、 シチリアといった地中海の島々と同じ」とされた。
カートグラフィー・アソシエイツ(Cartography Associates, LLC)の古地図収集家デビッド・ラムゼイ(David M. Rumsey)はモンテの地図を自身のサイト「David Rumsey Map Collection」で公開した。さらに彼はこの60枚をデジタル化し、ラバーシーティングという技法を使い合成した1枚の世界地図(本誌表紙)も作成しており、その大きさは約3メートル四方にも及ぶ。ラムゼイは自身のコレクション(約15万点)を公共図書館ではなく、Web上で公開する道を選んだ。その一部は高精細画像だけではなく、グーグルアース上でも表示され、今後も増やしていくという。利用者はWebやGISブラウザを使い、さまざまな時代の複数の地図上に、道路や航空写真、衛星画像といった現在の地理空間データを重ねて見ることができる。地図展示のプラットフォームにICTを使うというムーブメントはXR(クロス・リアリティ)を含めた新時代の「地図博物館」のあり方の先例となろう。(編集部、2020年11月発行の「ICICニュース」などより)(編集部)
モンテは1585年7月に日本からヨーロッパへの初の公式使節団である「天正遣欧使節」とミラノで面会(ウルバーノ・モンテ年代記)している。そのため、1570年に発刊された“オルテリウス”の「世界の舞台」に比べ、日本の地名が詳しい。年代記には使節から伝えられた当時の日本の様子が記されており、「日本はイタリアの3倍もある大きな国(64葉裏、実際は1.25倍)」で、緯度は「ほぼ35°であり、気候はジブラルタル海峡や、サルディーニャ、 シチリアといった地中海の島々と同じ」とされた。
カートグラフィー・アソシエイツ(Cartography Associates, LLC)の古地図収集家デビッド・ラムゼイ(David M. Rumsey)はモンテの地図を自身のサイト「David Rumsey Map Collection」で公開した。さらに彼はこの60枚をデジタル化し、ラバーシーティングという技法を使い合成した1枚の世界地図(本誌表紙)も作成しており、その大きさは約3メートル四方にも及ぶ。ラムゼイは自身のコレクション(約15万点)を公共図書館ではなく、Web上で公開する道を選んだ。その一部は高精細画像だけではなく、グーグルアース上でも表示され、今後も増やしていくという。利用者はWebやGISブラウザを使い、さまざまな時代の複数の地図上に、道路や航空写真、衛星画像といった現在の地理空間データを重ねて見ることができる。地図展示のプラットフォームにICTを使うというムーブメントはXR(クロス・リアリティ)を含めた新時代の「地図博物館」のあり方の先例となろう。(編集部、2020年11月発行の「ICICニュース」などより)(編集部)