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地図情報
Vol.39 No.1 No.149「地図で学ぶ防災」
〔表紙解説〕
 「ハザードマップ輯製図」
 東京都区部荒川流域各区の水害ハザードマップ(Web版)をつなげてみた。いずれも荒川が氾濫した条件である。複数掲載されている場合、できるだけ条件の揃ったものを掲載したが、Web版のため、各世帯に配られたものとは異なる場合がある。
 各版の優劣を比較する意図はないため、区界などは削除した。
 これらの地図をつなげてみると水害に対する表現や情報の違いがわかる。浸水域の色調やメッシュ単位、避難場所や種類、避難方向の表現、使用ベースマップなどが異なっている。
 浸水の危険度や深さを色調や濃さで表しているが、区により赤系・青系に分かれる。色彩心理では「危険は赤」という認識があるが、他の防災マップ(火災マップなど)との関係から見れば色の選択は重要である。また、縮尺や紙サイズなどの違いからか、情報量の差も大きい。例えば、避難に必要と考え、橋名を記載した区がある。防災に関する地域差・意識差などが興味深い。
 バリアフリーやユニバーサルデザインに配慮しているかなども重要だ。凡例や防災情報も含めて各区のハザードマップはWebで公開されているのでぜひ覧いただきたい。(編集部)
使用したハザードマップ(市町村コード順)
・千代田区洪水避難地図(洪水ハザードマップ荒川版)
・中央区洪水ハザードマップ(荒川版)
・台東区 水害ハザードマップ 荒川が氾濫した場合
・墨田区洪水ハザードマップ(荒川が氾濫した場合)
・江東区洪水ハザードマップ 〜荒川がはん濫した場合に備えて〜
・荒川区防災地図水害版(荒川堤防の複数箇所が決壊した場合)
・葛飾区 荒川洪水ハザードマップ
・江戸川区 江戸川・利根川・荒川がはん濫した場合

〔付録解説〕
「木曽川流域濃尾平野水害地形分類図」(1956年、5万分1)」
 この水害地形分類図は、総理府資源調査会事務局 1956 『水害地域開發上の基礎的調査研究』社団法人資源協会編集・発行 の附図である。本書の序に「わが国の産業を発展させ国民生活の向上を図るためには、国土保全の対策を樹てるとともに積極的に土地の高度利用を推進しなければならない。…(略)…。本書は、水害になやむわが国大小河川の流域における沖積平野の地理地形的特性を解明しつつ洪水の型を規定し、流域経済圏の安全を確保するとともに、合理的土地利用の方向を示唆したものである。」と書かれている。
 1959年には濃尾平野を伊勢湾台風が襲い、高潮洪水が大きな被害をもたらした。この水害地形分類図の「異常の洪水時に冠水」の表示範囲が浸水域と、長期に湛水した範囲が図の三角州の範囲とほぼ一致し、現在の中日新聞で「地図は悪夢を知っていた」「ピッタリ一致した災害予測」と報道された有名な図である。
 現在、国土交通省国土地理院では、この水害地形分類図がきっかけとなり、土地条件調査の重要性が認識され、主に平野部の地形分類を表示した主題図である土地条件図が整備されている。また、治水を目的にした治水地形分類図(全854面)をホームページで公開している。また、その地形分類項目はハザードマップに応用されており、ハザードマップを利用する際には、これらの図を併用することが、より良い理解につながり、洪水や地盤災害の危険性などの把握に有用である。 (滝沢由美子)
目 次

■巻頭随筆
・地図でわかる、自然災害を受けやすい土地、受けにくい土地
■特集 地図で学ぶ防災
・ハザードマップはどうやってつくられるか
・“逃げ地図づくり”を通した災害リスクの認識
・中学校社会科地理的分野の授業におけるハザードマップの利用と実践
・ハザードマップの点検・評価の試み
・国土交通省「ハザードマップポータルサイト」について
■地図楽
・読図のヒントⅩⅩⅩⅥ ひらがな から 漢字へ(駅名表示と地名と)
・私の巡検旅日記① —古い町並みを訪ねて—
・地図と私 地図編集者のあしあと
■文献紹介
・社会科教育と災害・防災教育 東日本大震災に社会科はどう向き合うか
・基礎からわかる 地図の大百科 全4巻
■資料室
・2018年12月号〜2019年2月号5
■お知らせ
・(一財)地図情報センターからのお知らせ
・新潟放送 ラジオ朗読番組「イザベラ・バードが見た明治の新潟」CD紹介
■付録
・木曽川流域濃尾平野水害地形分類図(1956年、5万分1)
付録:木曽川流域濃尾平野水害地形分類図(1956年、5万分1、約80%縮小)