地図情報 Vol.37 No.2 通巻142号 特集:名古屋を知る
〔表紙解説〕
「観光の名古屋市とその付近(大名古屋名勝交通鳥瞰図)」(名古屋市勧業協会刊、昭和8年)
「観光の名古屋市とその付近(大名古屋名勝交通鳥瞰図)」(名古屋市勧業協会刊、昭和8年)
初三郎の代表作といえば、「観光の名古屋市とその付近」(大名古屋名勝交通鳥瞰図)名古屋市勧業協会刊、昭和8年の改訂版こそ表題の作品(昭和12年、2種)である。汎太平洋平和博覧会(約481万人入場)を前にして市が依頼ということだ。特色のある大胆な構図は、西南側の木曽・長良・揖斐三川上空から斜め下を俯瞰する様子を描画。左端には三川の中・上流部の日本ライン、犬山(鵜飼の篝火、蘇江画室表示)付近をU字型に曲げることによって、雪冠を頂く伊吹山や木曽御岳山、その背後に琵琶湖、遙か遠くに朝鮮半島まで入れる苦心。中央部は空襲被災前の名古屋市街地を細部にわたって緻密に描く。名古屋駅や名古屋城(再建プラン)、大須観音、熱田神宮、東山公園など。他にも立体的ビル群の建物名称まで入れ、新旧地図としても使える配慮。右端には、博覧会場や名古屋港の姿を示し、伊勢湾から伊勢神宮、朝熊山を山当てしながら外洋の太平洋に出る航路までも表現。象徴としての富士山(本当は名古屋から見えない)もしっかり描写していて嬉しくなるほどだ。四方に延びた鉄道路線網の色分けも親切である。(藤本一美)
〔付録〕大判ポスター:「名古屋市鳥瞰図」再発見