〔表紙解説〕
「坂東順礼独案内」(人文社版復刻古地図)
江戸時代末期に発行された、江戸両国の大黒屋平吉板を人文社が復刻したものを掲載した。原本の詳細は不明だが、他に同図は中嶋屋松兵衛板、西村屋与八板、中川タケ板がある。図中には1札所から33札所迄の地理情報(宿名、宿と宿の間の距離など)が描かれ、凡例には、卍印は札所を、黒地の長方形に白のかな文字で国名を、城の絵を上部に置く朱色の四角は御城下の印、朱色の楕円形は追分の印、黒丸は宿あるいは立場の印、さらに神社絵記号、仏閣絵記号、国境は太い黒線、黒縁の黄色線は順礼道の印、細い黒一重線は順礼の別の道の印、川の説明が描かれている。(編集部)
〔付録解説〕
「日本海山潮陸図」(人文社版復刻古地図)
「日本海山潮陸図」の原本刊行年は元禄4(1691)年である。浮世絵師・石川流宣の作で、いわゆる流宣日本図である。18世紀末迄の約100年間に約30版を重版し、広く流布していた。
その形は正確な日本地図とはいえないが、その情報量がすごい。凡例では大きい四角形は城を、小さい四角形は小城を、丸型は屋敷城を表し、図中ではそれぞれに城主名と石高を記載。大きい四角形の中には城の景観が描かれている。またほかの地理情報も盛り沢山だ。江戸幕府は大名の国替えをたびたび実施したが、その経年変化を追うことが、版を重ねる事につながったといえる。
交通関係では東海道の宿駅には宿間の距離や駄賃が、中山道ほかの道には宿間の距離を記載。また、海上には航路が距離とともに記載されている。左上の海上には「大明」と描かれた幟をあげた中国の舟が描かれている。南方海上には「羅列国」(羅刹国)、北方には「韓唐」がその文字と共に国土も描かれている。当時の人々はこれらの国があることを信じていたのだろう。左上部には長崎から中国や東南アジアにいたる主な都市、地域、さらには紅毛迄の距離の一覧表がある。
各所旧跡の情報も、陸上部への記載の他、下側中央と、右下に「日本国一ノ宮并郡」の一覧表を載せ、各国の郡名と一宮を列記している。
編集部(国立歴史民俗博物館ホームページ、歴史系総合誌「歴博」第134号「流宣日本図の地理情報」を参考にさせていただきました)