■ 巻頭随筆 付録 「上海地図」(解説) |
地図情報 Vol.30 No.1 通巻113号 「変貌する都市・上海」
〔附録解説〕「上海地図」大正14年7月3日 至誠堂発行(原寸)第2次大戦前、中国大陸の諸都市を表現した地図としては、小縮尺の中国全図や北部・中部・南部を表した地図中の分図として簡単に表されたものは比較的多く見られた。一般的には、日本の地図作製者や書籍出版社が国内で作製し出版したものが多かった。今号付録の「上海地図」は国内で作製されたものと思われるが、販売は現地の上海が主体であったようである。従来までで実見した都市図で、日本人向きの都市図の中で出版点数の最も多かったものが上海の地図であり、次に北京、南京と続き、香港やマカオはあまり多くないようである。 上海地図は大正中期から昭和10年代までみられるが、本図の発行年である大正14(1925)年というのは日本語の地図としては比較的早い時期であり、本文論説中にも記されているが、工業化が進み都市インフラの諸施設が整う時期でもあった。 民間作製の地図の内容に関しては、この後の地図も様式は大きな変化はないが、本図を含め既製の外国製地図を翻訳したものが主流を占めている。この地図発行後に南京に国民政府が成立し、上海の様子も大きく変化する。 本図の縮尺は約26,000分の1。距離同心円の中心は南京路東端の哩起点。なお大正の年号は辛亥革命の翌年起立した中華民国の年号と同じである。 (清水 靖夫 地図情報センター理事) 〔付録〕 |
|